シェイクスピアに魅せられて、夏。

イタリア・ローマに実在するレビッビア刑務所では、囚人のための演劇実習があるという。
刑務所内には立派な劇場も併設されていて、毎年、一般の方々を観客に迎えた公演を行う。
演じる役者陣は全員、(この映画においては刑期十年以上若しくは終身刑の)
実際の重罪犯たち。


このような〈演劇プログラム〉なるものが、
この国にはしっかりと根付いている。


演劇の力。魅力。可能性。


作品をつくり上げる過程での、
人との関わり、集団における協調性。
公演を通しての、
達成感、喝采を浴びるよろこび。


演劇は人を成長させる。


忘れていた感情に気づかされる、
忘れていた感情を取り戻していく様子。
与えられた役の状況と、自分自身の現実が、オーバーラップしていく様。


演じる囚人の感情的現実が、
あらかじめ用意されたセリフと、
シンクロする瞬間。

そこにある表情、眼差しは、
紛れもない「真実」。

役を通しての関係性が
実際の人間関係にも反映され始め、
刑務所全体がローマ帝国と化するが如く、
緊張感と一体感に包まれる。


すれちがいざま、
清掃時間中、
運動の時間、
中庭で、
あらゆる時、あらゆる場所で、
稽古が「勃発」する。


演者と劇中の人物が、
観ている私たちにも、同化してみえてくる。



拍手喝采。
スタンディングオベーション。
舞台は幕を閉じる。


大役を果たした役者たちは、
囚人としての日常へと、戻っていく。



「夢」は続かない。
「日常」からは逃げられない。



“芸術を知った時から、この監房は牢獄になった”



「現実」は常についてまわる。
しかし、たとえどんな状況であっても、
我々の生きる世界は「現実」にある。
ここに、立っていなくてはならない。
ここに立つ以上は、
ここでのよろこびを知りたい。感じたい。
生きているという実感。


演劇は、夢から現実へと、
単に放り投げはしない。
ただただ突き落としはしない。


必ず、何らかギフトを与えてくれる。


気付きかもしれない。
学びかもしれない。
勇気かもしれない。
よろこび、安心かもしれない。


ほんのささいなことかもしれない。


ちいさな力になる、
ささやかなギフトと共に、
現実へと送り出してくれる。



この大地に足がついていることを、
ここに立っていることを、
しっかり感じて今日も生きよう。